だるまやひゃっかてん |
だるまや百貨店 |
冒頭文
一 炉ばたのゴザのこっち側で、たけをが箱膳を膝の前に据え、古漬けの香のもので麦七分の飯をかっこんでいる。 あっち側のゴザの上にはまま母のトラが、帯なし袷せを前垂れで締めた小柄な姿を外の明るい方へねじむけて、口じゅうじじむさい泡(あぶく)だらけにしながらおはぐろをつけている。年は三十そこそこだのに銀杏がえしに結び、昔風におはぐろをつけるのであった。 たけをは炉の自在にかかっ
文字遣い
新字新仮名
初出
「宮本百合子全集 第四巻」河出書房、1951(昭和26)年12月
底本
- 宮本百合子全集 第四巻
- 新日本出版社
- 1979(昭和54)年9月20日