一 二月の夜、部屋に火の気というものがない。 乙女は肩当てが穢れた染絣の掻巻(かいまき)をはおり、灰のかたまった茶色の丸い瀬戸火鉢の上へヘラ台の畳んだのを渡したところへ腰かけ、テーブルへ顔を伏せて凝(じ)っとしている。 厳しい寒気は、星の燦く黒い郊外の空から、往来や畑の土を凍らし、トタン屋根をとおし、夜と一緒に髪の根にまでしみて来る。 テーブルの前に低く下った電