ひはかがやけり
日は輝けり

冒頭文

一 K商店の若い者達の部屋は、今夜も相変らず賑やかである。まぶしいほど明るい電燈の下に、輝やいた幾つもの顔が、彼等同志の符牒のようになっているあだ名や略語を使って、しきりに噂の花を咲かせている。 けれども、変幅対と呼ばれている二人の若者は、いつもの通り、隅の方へ机を引き寄せて、一人は手紙を書き一人は拡げた紙一杯に、三角や円を描き散らしていた。「三角形BCEト、三角形DCFトノ外切円

文字遣い

新字新仮名

初出

「中央公論」1917(大正6)年1月号

底本

  • 宮本百合子全集 第一巻
  • 新日本出版社
  • 1979(昭和54)年4月20日