めんせきのあつみ |
面積の厚み |
冒頭文
或る年の冬が、もう少しで春と入れ換ろうとしていたある朝のことである。 A小学校の、古びた二階建の一番西端れの教室では、もう一ヵ月ほどのうちに義務教育を終ろうとしてい、引き続き入学すべき学校の、試験準備にせわしかった六学年の女生徒が、ざっと五十人許り数学の課業を授けられていた。 しめっぽい柔かな空気が、久し振りで明け渡したたくさんの窓々から快く流れ込んで来て、しんの暖かい日光が、
文字遣い
新字新仮名
初出
「宮本百合子全集 第十五巻(補遺)」河出書房、1953(昭和28)年1月
底本
- 宮本百合子全集 第一巻
- 新日本出版社
- 1979(昭和54)年4月20日