ちはゆたかなり
地は饒なり

冒頭文

一 或る日、ユーラスはいつもの通り楽しそうな足取りで、森から森へ、山から山へと、薄緑色の外袍を軽くなびかせながら、さまよっていました。銀色のサンダルを履き、愛嬌(あいきょう)のある美くしい巻毛に月桂樹の葉飾りをつけた彼が、いかにも長閑(のどか)な様子で現われると、行く先々のニムフ達は、どんなことがあっても見逃すことはありません。おだやかな心持のユーラスは四人の兄弟中の誰よりも、皆

文字遣い

新字新仮名

初出

「中央公論」1918(大正7)年1月号

底本

  • 宮本百合子全集 第一巻
  • 新日本出版社
  • 1979(昭和54)年4月20日