アンドレアス・タアマイエルがいしょ
アンドレアス・タアマイエルが遺書

冒頭文

小生は如何にしても今日(こんにち)以後生きながらへ居ること難く候。何故と申すに小生生きながらへ居る限りは、世間の人嘲(あざけ)り笑ひ申すべく、誰一人事実の真相を認めくるる者は有之(これある)まじく候。仮令(たとひ)世間にては何と申し候とも、妻が貞操を守り居たりしことは小生の確信する所に有之、小生は死を以て之を証明する考に候。今日まで種々の書籍に就て、此困難なる、又疑団(ぎだん)多き事件に就き取調べ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「明星」申歳一、1908(明治41)年1月1日

底本

  • 鴎外選集 第14巻
  • 岩波書店
  • 1979(昭和54)年12月19日