がいこつのくろんぼ
骸骨の黒穂

冒頭文

1 まだ警察の仕事の大ザッパな、明治二十年頃のこと……。 人気(にんき)の荒い炭坑都市、筑前(ちくぜん)、直方(のうがた)の警察署内で起った奇妙な殺人事件の話……。 煤煙に蔽われた直方の南の町外れに、一軒の居酒屋が在った。周囲は毎年、遠賀(おんが)川の浸水区域になる田圃(たんぼ)と、野菜畑の中を、南の方飯塚に通ずる低い堤防じみた街道の傍にポツンと立った藁葺小舎(わらぶきご

文字遣い

新字新仮名

初出

「オール読物」1934(昭和9)年12月号

底本

  • 夢野久作全集4
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1992(平成4)年9月24日