上 地の底の遠い遠い所から透きとおるような陰気な声が震え起って、斜坑(しゃこう)の上り口まで這上(はいあが)って来た。 「……ほとけ……さまあああ……イイ……ヨオオオイイ……旧坑口ぞおおお……イイイ……ヨオオオ……イイ……イイ……」 その声が耳に止まった福太郎はフト足を佇(と)めて、背後(うしろ)の闇黒(やみ)を振り返った。 それはズット以前から、この炭坑地方に残ってい