こくびゃくストーリー |
黒白ストーリー |
冒頭文
材木の間から ——1—— 飯田町附近の材木置場の中に板が一面に立て並べてあった。イナセな仕事着を着た若い者三平はその板をアチコチと並べ直しながらしきりにコワイロを使い、時には変な身ぶりを交ぜた。三平は芝居気違いであった。 三平はふと耳を澄ました。材木の間から向うをのぞいたが、忽ち眼を丸くして舌をダラリと出した。 インバネスに中折れの苦味走(にがみばし)った男
文字遣い
新字新仮名
初出
「黒白」1925(大正14)年5月号~9月号
底本
- 夢野久作全集3
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1992(平成4)年8月24日