ひとふさのぶどう
一房の葡萄

冒頭文

一 僕は小さい時に絵を描(か)くことが好きでした。僕の通(かよ)っていた学校は横浜(よこはま)の山(やま)の手(て)という所にありましたが、そこいらは西洋人ばかり住んでいる町で、僕の学校も教師は西洋人ばかりでした。そしてその学校の行きかえりにはいつでもホテルや西洋人の会社などがならんでいる海岸の通りを通るのでした。通りの海添いに立って見ると、真青(まっさお)な海の上に軍艦だの商船だのが一ぱい

文字遣い

新字新仮名

初出

「赤い鳥」1920(大正9)年8月

底本

  • 赤い鳥傑作集
  • 新潮文庫、新潮社
  • 1955(昭和30)年6月25日、1974(昭和49)年9月10日29刷改版