その日も、明けがたまでは雨になるらしく見えた空が、爽(さわ)やかな秋の朝の光となっていた。 咳の出ない時は仰向けに寝ているのがよかった。そうしたままで清逸(せいいち)は首だけを腰高窓の方に少しふり向けてみた。夜のひきあけに、いつものとおり咳がたてこんで出たので、眠られぬままに厠(かわや)に立った。その帰りに空模様を見ようとして、一枚繰(く)った戸がそのままになっているので、三尺ほどの幅だ