一 辺鄙な、村はずれの丘には、いつの間にか、華やかな幕を沢山吊るした急拵(ごしら)えの小屋掛が出来て、極東曲馬団の名がかけられ、狂燥なジンタと、ヒョロヒョロと空気を伝わるフリュートの音に、村人は、老(おい)も若きも、しばし、強烈な色彩と音楽とスリルを享楽し、又、いつの間にか曲馬団が他へ流れて行っても、しばらくは、フト白い流れ雲の中に、少年や少女の縊(くび)れた肢体を思い出すのである。