ありしひのうた なきこふみやのれいにささぐ |
在りし日の歌 亡き児文也の霊に捧ぐ |
冒頭文
在りし日の歌 () 含羞はぢらひ ——在りし日の歌—— なにゆゑに こゝろかくは羞(は)ぢらふ 秋 風白き日の山かげなりき 椎の枯葉の落窪に 幹々は いやにおとなび彳(た)ちゐたり 枝々の 拱(く)みあはすあたりかなしげの 空は死児等の亡霊にみち まばたきぬ をりしもかなた野のうへは あすとらかんのあはひ縫ふ 古代の象の夢なりき
文字遣い
新字旧仮名
初出
「在りし日の歌」創元社、1938(昭和13)年4月
底本
- 中原中也詩集
- 岩波文庫、岩波書店
- 1981(昭和56)年6月16日