らしょうもんのあとに
羅生門の後に

冒頭文

この集にはいっている短篇は、「羅生門」「貉(むじな)」「忠義」を除いて、大抵過去一年間——数え年にして、自分が廿五歳の時に書いたものである。そうして半(なかば)は、自分たちが経営している雑誌「新思潮」に、一度掲載されたものである。 この期間の自分は、東京帝国文科大学の怠惰なる学生であった。講義は一週間に六七時間しか、聴きに行かない。試験は何時(いつ)も、甚(はなは)だ曖昧(あいまい)な答

文字遣い

新字新仮名

初出

「時事新報」1917(大正6)年5月5日

底本

  • 日本の文学 33 羅生門
  • ほるぷ出版
  • 1984(昭和59)年8月1日