おうごんふうけい
黄金風景

冒頭文

海の岸辺に緑なす樫(かし)の木、その樫の木に黄金の細き鎖のむすばれて   —プウシキン— 私は子供のときには、余り質(たち)のいい方ではなかった。女中をいじめた。私は、のろくさいことは嫌(きら)いで、それゆえ、のろくさい女中を殊(こと)にもいじめた。お慶は、のろくさい女中である。林檎(りんご)の皮をむかせても、むきながら何を考えているのか、二度も三度も手を休めて、おい、とその度毎にきびし

文字遣い

新字新仮名

初出

「国民新聞」1939(昭和14)年3月

底本

  • きりぎりす
  • 新潮文庫、新潮社
  • 1974(昭和49)年9月30日、1988(昭和63)年3月15日29刷改版