ばしょうざっき
芭蕉雑記

冒頭文

一 著書 芭蕉は一巻の書も著はしたことはない。所謂芭蕉の七部集(しちぶしふ)なるものも悉(ことごとく)門人の著はしたものである。これは芭蕉自身の言葉によれば、名聞(みやうもん)を好まぬ為だつたらしい。 「曲翠(きよくすゐ)問(とふ)、発句(ほつく)を取りあつめ、集作ると云へる、此道の執心(しふしん)なるべきや。翁(をう)曰(いはく)、これ卑しき心より我(わが)上手(じやうず)なるを知ら

文字遣い

新字旧仮名

初出

「新潮」1923(大正12)年11月~1924(大正13)年7月

底本

  • 現代日本文学大系 43 芥川龍之介集
  • 筑摩書房
  • 1968(昭和43)年8月25日