ひかくげんごがくにおけるとうけいてきけんきゅうほうのかのうせいについて
比較言語学における統計的研究法の可能性について

冒頭文

言語の不思議は早くから自分の頭の中にかなり根深い疑問の種を植え付けていたもののようである。六七歳のころ、始めて従兄(いとこ)から英語の手ほどきを教えられた時に、最初に出会ったセンテンスは、たしか「猿(さる)が手を持つ」というのであった。その時、まず冠詞というものの「存在理由」がはなはだしく不可解なものに思われた。The(当時かなで書くとおりにジーと発音していた)が、至るところ文章の始めごとに繰り返

文字遣い

新字新仮名

初出

「思想」1928(昭和3)年3月

底本

  • 寺田寅彦随筆集 第二巻
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1947(昭和22)年9月10日、1964(昭和39)年1月16日第22刷改版