かねにちぬる |
鐘に釁る |
冒頭文
昔シナで鐘を鋳た後にこれに牛羊の鮮血を塗ったことが伝えられている。しかしそれがいかなる意味の作業であったかはたしかにはわからないらしい。この事について幸田露伴(こうだろはん)博士の教えを請うたが、同博士がいろいろシナの書物を渉猟された結果によると釁(ちぬ)るという文字は犠牲の血をもって祭典を挙行するという意味に使われた場合が多いようであるが、しかしとにかく、一書には鐘を鋳た後に羊の血をもってその裂
文字遣い
新字新仮名
初出
「応用物理」1933(昭和8)年1月
底本
- 寺田寅彦随筆集 第四巻
- 岩波文庫、岩波書店
- 1948(昭和23)年5月15日、1963(昭和38)年5月16日第20刷改版