ちゃわんのゆ
茶わんの湯

冒頭文

ここに茶わんが一つあります。中には熱い湯がいっぱいはいっております。ただそれだけではなんのおもしろみもなく不思議もないようですが、よく気をつけて見ていると、だんだんにいろいろの微細なことが目につき、さまざまの疑問が起こって来るはずです。ただ一ぱいのこの湯でも、自然の現象を観察し研究することの好きな人には、なかなかおもしろい見物(みもの)です。 第一に、湯の面からは白い湯げが立っています。

文字遣い

新字新仮名

初出

「赤い鳥」1922(大正11)年5月

底本

  • 日本の名随筆33 水
  • 作品社
  • 1985(昭和60)年7月25日