げっしょく
月蝕

冒頭文

★ 鋼(はがね)のように澄みわたる大空のまん中で 月がすすり泣いている。 ………けがらわしい地球の陰影(かげ)が 自分の顔にうつるとて………… それを大勢の人間から見られるとて………… …………身ぶるいして嫌がっている。   ★ ………しかし……… 逃れられぬ暗い運命は………… 刻々に彼女に迫って来る。 大空のただ中に…………   ★ ……はじまった…… 月蝕が…………

文字遣い

新字新仮名

初出

「猟奇」1928(昭和3)年3月

底本

  • 夢野久作全集3
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1992(平成4)年8月24日