たんげさぜん 01 けんうんこんりゅうのまき |
丹下左膳 01 乾雲坤竜の巻 |
冒頭文
夜泣きの刀 しずかに更(ふ)けてゆく秋の夜。 風が出たらしく、しめきった雨戸に時々カサ! と音がするのは庭の柿の病葉(わくらば)が散りかかるのであろう。その風が隙間を洩れて、行燈(あんどん)の灯をあおるたびに、壁の二つの人影が大入道のようにゆらゆらと揺ぐ——。 江戸は根津権現(ねづごんげん)の裏、俗に曙(あけぼの)の里といわれるところに、神変夢想流(しんぺんむそうりゅう)の町
文字遣い
新字新仮名
初出
「新版大岡政談」東京日日新聞、1927(昭和2)年10月15日~1928(昭和3)年5月31日
底本
- 林不忘傑作選1 丹下左膳(一) 乾雲坤竜の巻
- 山手書房新社
- 1992(平成4)年7月20日