学校の昼の休みに赤門(あかもん)前の友の下宿の二階にねころんで、風のない小春日の温かさを貪(むさぼ)るのがあの頃の自分には一つの日課のようになっていた。従ってこの下宿の帳場に坐っていつもいつも同じように長い煙管(きせる)をふすべている主婦ともガラス障子越しの御馴染(おなじみ)になって、友の居ると居ないにかかわらず自由に階段を上るのを許されていた。 ここな二階から見ると真砂町(まさごちょう