たかをもらいそこなったはなし
鷹を貰い損なった話

冒頭文

小学時代の先生方から学校教育を受けた外に同学の友達からは色々の大切な人間教育を受けた。そういう友達の中にも硬派と軟派と二種類あって、その硬派の首領株からはだいぶいじめられた。板垣退助を戴いた自由党が全盛の時代であったので、軍人の子供である自分は、「官権党の子」だという理由でいじめられた。東京訛が抜けなかったために「他国もんのべろしゃ〳〵」だと云っていじめられた。そうして、墨をよこさなければ帰りに待

文字遣い

新字新仮名

初出

「行動」1934(昭和9)年8月

底本

  • 寺田寅彦全集 第一巻
  • 岩波書店
  • 1996(平成8)年12月5日