しぎつき |
鴫つき |
冒頭文
別役(べっちゃく)の姉上が来て西の上(あが)り端(はな)で話していたら要太郎が台所の方から自分を呼んで裏へ鴫(しぎ)を取りに行かぬかと云う。自分はまだ一度も行った事がないが病後の事であるからと思うて座敷で書見(しょけん)をしている父上に行ってもよう御座いましょかと聞くと行くはよいが傘をさして行けとの事であったから、帽をかぶってわるい方の蝙蝠傘(こうもりがさ)を持って裏門へまで行くと、要太郎はもう網
文字遣い
新字新仮名
初出
1901(明治34)年9月
底本
- 寺田寅彦全集 第一巻
- 岩波書店
- 1996(平成8)年12月5日