こうちがえり
高知がえり

冒頭文

明後日は自分の誕生日。久々で国にいるから祝の御萩(おはぎ)を食いに帰れとの事であった。今日は天気もよし、二、三日前のようにいやな風もない。船も丁度あると来たので帰る事と定める。朝飯の時勘定をこしらえるようにと竹さんに云い付ける。こんどはいつ御出(おい)でかと例の幡多訛(はたなま)りで問う。おれの事だからいつだかわからんと云ったような事を云うてザブ〳〵とすまし、机の上をザット片付けて革鞄(かばん)へ

文字遣い

新字新仮名

初出

1901(明治34)年11月

底本

  • 寺田寅彦全集 第一巻
  • 岩波書店
  • 1996(平成8)年12月5日