みかん
蜜柑

冒頭文

或(ある)曇(くも)つた冬(ふゆ)の日暮(ひぐれ)である。私(わたくし)は横須賀發(よこすかはつ)上(のぼ)り二等(とう)客車(きやくしや)の隅(すみ)に腰(こし)を下(おろ)して、ぼんやり發車(はつしや)の笛(ふえ)を待(ま)つてゐた。とうに電燈(でんとう)のついた客車(きやくしや)の中(なか)には、珍(めづ)らしく私(わたくし)の外(ほか)に一人(ひとり)も乘客(じようきやく)はゐなかつた。外

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「新潮」1919(大正8)年5月1日

底本

  • 現代日本文學全集 第三〇篇 芥川龍之介集
  • 改造社
  • 1928(昭和3)年1月9日