こてんりゅうとうだび
古典竜頭蛇尾

冒頭文

きのうきょう、狂せむほどに苦しきこと起り、なすところなく額(ひたい)の油汗拭(ぬぐ)うてばかりいたのであるが、この苦しみをよそにして、いま、日本文学に就いての涼しげなる記述をしなければならない。こうしてペンを握ったまま、目を閉じると、からだがぐいぐい地獄へ吸い込まれるような気がして、これではならぬと、うろうろうろうろ走り書きしたるものを左に。 日本文学に就いて、いつわりなき感想をしたため

文字遣い

新字新仮名

初出

「文芸懇話会」1936(昭和11)年5月1日

底本

  • 太宰治全集10
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1989(平成元)年