ちくおんき
蓄音機

冒頭文

エジソンの蓄音機の発明が登録されたのは一八七七年でちょうど西南戦争(せいなんせんそう)の年であった。太平洋を隔てて起こったこの二つの出来事にはなんの関係もないようなものの、わが国の文化発達の歴史を西洋のと引き合わせてみる時の一つの目標にはなる。のみならず少なくとも私にはこの偶然の合致が何事かを暗示する象徴のようにも思われる。 エジソンの最初の蓄音機は、音のために生じた膜の振動を、円筒の上

文字遣い

新字新仮名

初出

「東京朝日」1922(大正11)年4月

底本

  • 寺田寅彦随筆集 第二巻
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1947(昭和22)年9月10日、1964(昭和39)年1月16日第22刷改版