りょうのついおく |
亮の追憶 |
冒頭文
亮(りょう)の一周忌が近くなった。かねてから思い立っていた追憶の記を、このしおに書いておきたいと思う。 亮は私の長姉の四人の男の子の第二番目である。長男は九年前に病死し、四男はそれよりずっと前、まだ中学生の時代に夭死(ようし)した。昨年また亮が死んだので、残るはただ三男の順(じゅん)だけである。順はとくにいでて他家を継いでいる。それで家に残るは六十を越えた彼らの母と、長男の残した四人の子
文字遣い
新字新仮名
初出
「明星」1922(大正11)年5月
底本
- 寺田寅彦随筆集 第二巻
- 岩波文庫、岩波書店
- 1947(昭和22)年9月10日、1964(昭和39)年1月16日第22刷改版