ろぼうのくさ |
路傍の草 |
冒頭文
一 車上 「三上(さんじょう)」という言葉がある。枕上(ちんじょう)鞍上(あんじょう)厠上(しじょう)合わせて三上の意だという。「いい考えを発酵させるに適した三つの環境」を対立させたものとも解釈される。なかなかうまい事を言ったものだと思う。しかしこれは昔のシナ人かよほど暇人でないと、現代では言葉どおりには適用し難い。 三上の三上たるゆえんを考えてみる。まずこの三つの境地はいずれも肉体的には
文字遣い
新字新仮名
初出
「中央公論」1925(大正14)年11月
底本
- 寺田寅彦随筆集 第二巻
- 岩波文庫、岩波書店
- 1947(昭和22)年9月10日、1964(昭和39)年1月16日第22刷改版