じじざっかん |
時事雑感 |
冒頭文
煙突男 ある紡績会社の労働争議に、若い肺病の男が工場の大煙突の頂上に登って赤旗を翻し演説をしたのみならず、頂上に百何十時間居すわってなんと言ってもおりなかった。だんだん見物人が多くなって、わざわざ遠方から汽車で見物に来る人さえできたので、おしまいにはそれを相手の屋台店が出たりした。これに関する新聞記事はおりからの陸軍大演習のそれと相交錯して天下の耳目をそばだたせた。宗教も道徳も哲学も科学も法
文字遣い
新字新仮名
初出
「中央公論」1931(昭和6)年1月
底本
- 寺田寅彦随筆集 第二巻
- 岩波文庫、岩波書店
- 1947(昭和22)年9月10日、1964(昭和39)年1月16日第22刷改版