カメラをさげて |
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冒頭文
このごろ時々写真機をさげて新東京風景断片の採集に出かける。技術の未熟なために失敗ばかり多くて獲物ははなはだ少ない。しかし写真をとろうという気で町を歩いていると、今までは少しも気のつかずにいたいろいろの現象や事実が急に目に立って見えて来る。つまり写真機を持って歩くのは、生来持ち合わせている二つの目のほかに、もう一つ別な新しい目を持って歩くということになるのである。 顕微鏡も、やはりわれわれ
文字遣い
新字新仮名
初出
「大阪朝日」1931(昭和6)年11月
底本
- 寺田寅彦随筆集 第三巻
- 岩波文庫、岩波書店
- 1948(昭和23)年5月15日、1963(昭和38)年4月16日第20刷改版