こあさま |
小浅間 |
冒頭文
峰(みね)の茶屋(ちゃや)から第一の鳥居をくぐってしばらくこんもりした落葉樹林のトンネルを登って行くと、やがて急に樹木がなくなって、天地が明るくなる。そうして右をふり仰ぐと突兀(とっこつ)たる小浅間(こあさま)の熔岩塊(ようがんかい)が今にも頭上にくずれ落ちそうな絶壁をなしてそびえ立っている。その岩塊の頭を包むヴェールのように灰砂の斜面がなめらかにすそを引いてその上に細かく刺繍(ししゅう)をおいた
文字遣い
新字新仮名
初出
「東京朝日」1935(昭和10)年9月
底本
- 寺田寅彦随筆集 第五巻
- 岩波文庫、岩波書店
- 1948(昭和23)年11月20日、1963(昭和38)年6月16日第20刷改版