せいねん
青年

冒頭文

壱 小泉純一は芝日蔭町(しばひかげちょう)の宿屋を出て、東京方眼図を片手に人にうるさく問うて、新橋停留場(ていりゅうば)から上野行の電車に乗った。目まぐろしい須田町(すだちょう)の乗換も無事に済んだ。さて本郷三丁目で電車を降りて、追分(おいわけ)から高等学校に附いて右に曲がって、根津権現(ねづごんげん)の表坂上にある袖浦館(そでうらかん)という下宿屋の前に到着したのは、十月二十何日かの午

文字遣い

新字新仮名

初出

「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月

底本

  • 青年
  • 新潮文庫、新潮社
  • 1948(昭和23)年12月15日、1985(昭和60)年11月15日66刷改版