デカダンこうぎ |
デカダン抗議 |
冒頭文
一人の遊蕩(ゆうとう)の子を描写して在るゆえを以(もっ)て、その小説を、デカダン小説と呼ぶのは、当るまいと思う。私は何時でも、謂(い)わば、理想小説を書いて来たつもりなのである。 大まじめである。私は一種の理想主義者かも知れない。理想主義者は、悲しい哉(かな)、現世に於(お)いてその言動、やや不審、滑稽の感をさえ隣人たちに与えている場合が、多いようである。謂わば、かのドン・キホオテである
文字遣い
新字新仮名
初出
「文芸世紀」1939(昭和14)年11月
底本
- 太宰治全集3
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1988(昭和63)年10月25日