グッド・バイ
グッド・バイ

冒頭文

変心 (一) 文壇の、或(あ)る老大家が亡(な)くなって、その告別式の終り頃から、雨が降りはじめた。早春の雨である。 その帰り、二人の男が相合傘(あいあいがさ)で歩いている。いずれも、その逝去(せいきょ)した老大家には、お義理一ぺん、話題は、女に就(つ)いての、極(きわ)めて不きんしんな事。紋服の初老の大男は、文士。それよりずっと若いロイド眼鏡(めがね)、縞(しま)ズボンの好男

文字遣い

新字新仮名

初出

「朝日評論」1948(昭和23)年7月

底本

  • 太宰治全集9
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1989(平成元)年5月30日