はじ

冒頭文

菊子さん。恥(はじ)をかいちゃったわよ。ひどい恥をかきました。顔から火が出る、などの形容はなまぬるい。草原をころげ廻って、わあっと叫びたい、と言っても未だ足りない。サムエル後書にありました。「タマル、灰を其(そ)の首(こうべ)に蒙(かむ)り、着たる振袖(ふりそで)を裂き、手を首(こうべ)にのせて、呼(よば)わりつつ去(さり)ゆけり」可愛そうな妹タマル。わかい女は、恥ずかしくてどうにもならなくなった

文字遣い

新字新仮名

初出

「婦人画報」1942(昭和17)年1月

底本

  • 太宰治全集4
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1988(昭和63)年12月1日