ありときのこ |
ありときのこ |
冒頭文
苔(こけ)いちめんに、霧(きり)がぽしゃぽしゃ降(ふ)って、蟻(あり)の歩哨(ほしょう)は鉄(てつ)の帽子(ぼうし)のひさしの下から、するどいひとみであたりをにらみ、青く大きな羊歯(しだ)の森の前をあちこち行ったり来たりしています。 向(む)こうからぷるぷるぷるぷる一ぴきの蟻(あり)の兵隊(へいたい)が走って来ます。 「停(と)まれ、誰(だれ)かッ」 「第(だい)百二十八聯隊(れ
文字遣い
新字新仮名
初出
「天才人」1933(昭和8)年3月号
底本
- セロ弾きのゴーシュ
- 角川文庫、角川書店
- 1957(昭和32)年11月15日、1967(昭和42)年4月5日10版