じょるい
女類

冒頭文

僕(二十六歳)は、女をひとり、殺した事があるんです。実にあっけなく、殺してしまいました。 終戦直後の事でした。僕は、敗戦の前には徴用で、伊豆(いず)の大島にやられていまして、毎日毎日、実にイヤな穴掘工事を言いつけられ、もともとこんな痩(や)せ細ったからだなので、いやもう、いまにも死にそうな気持ちになったほどの苦労をしました。終戦になって、何が何やら、ただへとへとに疲れて、誇張した言い方を

文字遣い

新字新仮名

初出

「八雲」1948(昭和23)年4月

底本

  • 太宰治全集9
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1989(平成元)年5月30日