やまもとゆうぞうしのきょうち |
山本有三氏の境地 |
冒頭文
今日、山本有三氏の読者というものは、随分ひろい社会の各層に存在していることであろうと思う。 大仏次郎氏などの作品も、吉屋信子氏が読まれるとは別のところに多くの読者をもっていることでは、山本有三氏と同様であろうが、作者と読者との間にある共感の種類は、必ずしもこの二人の作者に於て同じものであるとは思えない。大仏次郎氏の近作「雪崩」などを見ても、読者が大仏氏に牽かれるのは、この作者のこの作者ら
文字遣い
新字新仮名
初出
「文芸」1937(昭和12)年6月号
底本
- 宮本百合子全集 第十一巻
- 新日本出版社
- 1980(昭和55)年1月20日