「あいえんきょう」におけるえいがてきひょうげんのもんだい |
「愛怨峡」における映画的表現の問題 |
冒頭文
「愛怨峡」では、物語の筋のありふれた運びかたについては云わず、そのありきたりの筋を、溝口健二がどんな風に肉づけし、描いて行ったかを観るべきなのだろう。 私は面白くこの映画を見た。溝口という監督の熱心さ、心くばり、感覚の方向というものがこの作品には充実して盛られている。信州地方の風景的生活的特色、東京の裏町の生活気分を、対比してそれぞれを特徴において描こうとしているところ、又、主人公おふみの生
文字遣い
新字新仮名
初出
「帝国大学新聞」1937(昭和12)年6月28日号
底本
- 宮本百合子全集 第十一巻
- 新日本出版社
- 1980(昭和55)年1月20日