イタリーげいじゅつにあるひとつのもんだい いわゆる「だっしゅつ」へのぎもん |
イタリー芸術に在る一つの問題 所謂「脱出」への疑問 |
冒頭文
先達(せんだっ)て「リビヤ白騎隊」というイタリー映画の試写を観る機会を得た。原作はフランスのジョセフ・ペイレのゴンクール受賞作品だそうで、ファッショ紀元十五年度のムッソリーニ賞杯獲得映画である。筋は単純なものである。クリスチアーナという女の愛に失望したマリオ・ルドヴィッチ中尉が従来の生活環境と感情とから脱却するために、アフリカのリビヤへ赴きそこの守備隊に加って土民征服に出かける。この経験から生きる
文字遣い
新字新仮名
初出
「映画創造」1937(昭和12)年7月号
底本
- 宮本百合子全集 第十一巻
- 新日本出版社
- 1980(昭和55)年1月20日