ジャンのものがたり
ジャンの物語

冒頭文

フランスの『マリアンヌ』という新聞に、ロシアの大文豪であったレフ・トルストイの孫息子にあたるジャンという少年が、浮浪児として少年感化院に入れられ、そこから脱走して再び警察の手にとらわれたときかいた「ジャンの手記」というものを発表した。 トルストイには何人かの息子がいたが、父親が人間の歴史にのこした強大な足跡をうけてそれを発展させてゆくような人は一人も出なかった。ジャンの父であるひとも、そ

文字遣い

新字新仮名

初出

「婦人公論」1937(昭和12)年12月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十一巻
  • 新日本出版社
  • 1980(昭和55)年1月20日