れきしのおちぼ おうがい・そうせき・かふうのふじんかんにふれて |
歴史の落穂 鴎外・漱石・荷風の婦人観にふれて |
冒頭文
森鴎外には、何人かの子供さんたちのうちに二人のお嬢さんがあった。茉莉と杏奴というそれぞれ独特の女らしい美しい名を父上から貰っておられる。杏奴さんは小堀杏奴として、いわば自分の咲き出ている庭の垣の彼方を知らないことに何の不安も感じない、自然な嬉々とした様子で身辺の随筆などをこの頃折々発表しておられる。 お姉さんの茉莉さんがまだ幼くておさげの時分、私は何かの雑誌でその写真を見たことがあった。
文字遣い
新字新仮名
初出
「国文学解釈と鑑賞」1938(昭和13)年1月号
底本
- 宮本百合子全集 第十一巻
- 新日本出版社
- 1980(昭和55)年1月20日