さくひんのけつみゃく |
作品の血脈 |
冒頭文
ふだん近くにいない人々にとって、岡本かの子さんの訃報はまことに突然であった。その朝新聞をひろげたら、かの子さんの見紛うことのない写真が目に入り、私はその刹那何かの事故で怪我でもされたかと感じた。そしたら、それは訃報であって、五日も前のことであった。一種流れ掠めて行くものを感じた。五日も前。—— 初めてかの子さんに会ったのは、昔、或る会の折であった。その会には女が二人しかいず、その一人はか
文字遣い
新字新仮名
初出
「中央公論」1939(昭和14)年5月号
底本
- 宮本百合子全集 第十一巻
- 新日本出版社
- 1980(昭和55)年1月20日