ちのしおぶんがくのしお
地の塩文学の塩

冒頭文

文学批評の貧困ということがこの頃又人々の注意をよびさましている。貧困な今日の文学において、批評という一つの分野についてだけ云われることなのだろうか。批評精神というものはただ或る対象をとらえて、それを分析したり解剖したり、つまりふわけの仕事をして、これのからくりはこういうものである、ということを明かにする範囲がその本質ではないだろうと思う。批評精神の根本には、創造的な面がある。その創造的な思意に或る

文字遣い

新字新仮名

初出

「懸賞界」1940(昭和15)年2月上旬号

底本

  • 宮本百合子全集 第十一巻
  • 新日本出版社
  • 1980(昭和55)年1月20日