さくひんのよろこび そうさくメモ
作品のよろこび 創作メモ

冒頭文

生粋の芸術的な作品が私たちに与える深い精神の慰安(コンソレーション)はどこから来るものなのだろうか。芸術作品の底からさして来る真の明るさというようなものは極めて複雑な光りであって、浅い形で云われる筋の楽天性だの、作家の気質ののびやかさなどにだけかかっているものではない。もっと奥のあるものだ。感動をとおして心に迫る慰安は、立派な悲劇をよんだとき、一層惻々と私たちの精神をゆすってよろこびの感覚にまでた

文字遣い

新字新仮名

初出

「帝国大学新聞」1940(昭和15)年2月12日号

底本

  • 宮本百合子全集 第十一巻
  • 新日本出版社
  • 1980(昭和55)年1月20日