さっかにかたりかけることば 『げんだいぶんがくろん』にふれて |
作家に語りかける言葉 『現代文学論』にふれて |
冒頭文
窪川鶴次郎さんの『現代文学論』の、尨大な一冊を読み進んでゆくうちに、特別感興をそそられたことがある。それは、論ぜられているそのことが、論として読者である私を承服させるというばかりでなく、一つ一つと読み深めてゆくにつれて私のなかの作家としての心が目醒され、ヒントをうけ、身じろぎを始めて文学への情愛を一層しみじみと抱き直すような感情におかれた点である。 このことは、六百六十一頁もあるこの文学
文字遣い
新字新仮名
初出
「日本評論」1940(昭和15)年3月号
底本
- 宮本百合子全集 第十一巻
- 新日本出版社
- 1980(昭和55)年1月20日