ぶんがくのディフォーメイションについて
文学のディフォーメイションに就て

冒頭文

私たちの日常生活にある歴史の感覚というものを考えてみると、いろいろ非常に興味ふかくもあり同時にこわいようなところがある。一定の時間がすぎて、所謂歴史となって目の前に現れたとき、その時代の諸関係諸要素というものがある程度まで客観化されて、例えば今日明治初年の文化の性質を語る場合のように、把握しやすい輪廓をもって見えて来るけれども、今日の私たちの生活の感覚が日々の歴史の全体の動きと、自分という個人の歴

文字遣い

新字新仮名

初出

「帝国大学新聞」1940(昭和15)年5月27日号

底本

  • 宮本百合子全集 第十一巻
  • 新日本出版社
  • 1980(昭和55)年1月20日