ぶんがくせいしんとひはんせいしん
文学精神と批判精神

冒頭文

文学に関することとしての批判精神の問題とその解釈とは、この三四年来、随分特別異常な待遇をうけて来ていると思う。 今から四年ばかり前、日本には批評文学、或は文学的批評という一種の風が発生した。これまで文芸批評と云えば文学現象の客観的評価をその当然の任務として来ていたし、作家と読者とに対してその評価の責任をも明らかにしているものと思われていた。ところが、四年前のその時期頃から、批評の多くは文

文字遣い

新字新仮名

初出

「法政大学新聞」1940(昭和15)年6月20日号

底本

  • 宮本百合子全集 第十一巻
  • 新日本出版社
  • 1980(昭和55)年1月20日